「補助金を使ってITツールを導入したいが、何から手をつければいいかわからない」「CRM・会計ソフト・RPAなど候補はあるが、自社にはどれが必要なのか判断できない」とお悩みではありませんか?
この記事では、東京都「中小企業デジタル導入促進補助事業」の制度概要から、対象になるツールの範囲、課題別のツールの選び方、助成率・申請の流れまでを網羅的に解説しています。
結論として、本制度は都内中小企業がCRM・会計・勤怠管理・RPAなど幅広いITツールの導入費用を助成対象にできる制度であり、「何を選べばいいかわからない」段階からでも活用を検討できる内容になっています。
東京都でITツールを補助金導入できる制度とは
東京都には、都内中小企業のデジタル化を支援するための補助金・助成金が複数用意されていますが、なかでも幅広いITツールの導入費用を助成対象にできるのが「中小企業デジタル導入促進補助事業」です。
実施主体は公益財団法人東京都中小企業振興公社で、都内中小企業者等(会社・個人事業主・中小企業団体)が対象となります。
本制度は、CRM・SFA、会計・請求システム、勤怠管理、RPA、ECサイト構築ツールなど、業種・業務を問わず幅広いソフトウェア・クラウドサービスの導入費用が対象になり得る点が特徴です。
「補助金を使いたいが、具体的にどのツールを選べばいいかわからない」という段階の企業でも、まず制度の枠組みを理解した上でツール選定に進める設計になっています。
令和8年度の変更点(名称変更・助成上限の増額)
本制度は、令和7年度までは「中小企業デジタルツール導入促進支援事業」という名称でしたが、令和8年度から「中小企業デジタル導入促進補助事業」に名称が変わっています。
検索する際は、両方の名称を覚えておくと過去の情報も見つけやすくなります。
令和8年度の主な変更点として、助成上限額が100万円から150万円に増額されました。
また、申請フォームが整理され、OBD等接続ハードウェアの区分(上限20万円)とスマートレジ等専用機器の区分(上限75万円)が明確に分かれています。
申請者にとっては、上限額の増額という恩恵の方が大きい制度改定といえます。
助成率・助成限度額
助成限度額は最大150万円で、申請できる助成金の下限額は5万円です。
助成率は助成対象経費の2分の1以内が原則ですが、小規模企業者である場合や、省エネ・紙資源の使用量削減・廃棄物削減・脱炭素など環境負荷軽減に資するツールを導入する場合は、3分の2以内まで引き上げられます。
以下は、本制度の基本的な特徴をまとめた一覧表です。
| 項目 | 内容 |
| 実施主体 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 |
| 助成限度額 | 最大150万円(下限5万円) |
| 助成率 | 原則1/2以内(小規模事業者・環境負荷軽減ツールは2/3以内) |
| 助成対象期間 | 交付決定日から2年間 |
| フォローアップ支援 | 専門家による無料支援を最大5回(1回2時間以内) |
対象になるツールの範囲と対象外の経費
補助金を活用するうえで最も重要なのが、自社が導入したいツールが対象経費に含まれるかどうかです。ここでは、対象経費の範囲と、対象外となりやすい費用を整理します。
対象となる経費
助成対象経費は、都内中小企業者等が新たに導入するデジタルツール(ソフトウェア、クラウドサービス)、および当該ソフトウェアと連携して動作する専用の機器(特定用途に限定されたハードウェア)に係る購入費等です。
「新たに導入する」という点がポイントで、すでに利用しているツールの継続利用や単なるバージョンアップは対象になりにくい点に注意が必要です。
CRM・SFA、会計・請求管理システム、勤怠管理システム、RPA、グループウェア、ECサイト構築ツールなど、業務のデジタル化に資するソフトウェア・クラウドサービスは、幅広く対象経費の候補になり得ます。
対象外となる経費(要注意)
一方で、PCやタブレットなどの汎用機器、スクラッチ開発(ゼロからのシステム開発)、既存ツールのライセンス追加、単なるホームページ制作などは、対象外となる可能性があります。
制度名や上限額だけで判断せず、導入したいツールが実際に対象に該当するかどうかを、申請前に個別に確認することが重要です。
CRM・SFAのようなクラウド型のSaaSツールは、新規導入であれば対象経費に該当しやすい性質のものです。
一方で、自社独自に開発するスクラッチシステムや、既存システムのライセンスを追加するだけの契約は対象外になりやすいため、導入形態によって扱いが変わる点は覚えておく必要があります。
「何を選べばいいかわからない」を解決するツールの選び方
補助金の対象になり得るツールは幅広いため、「結局どれを選べばいいのか」で迷う企業は少なくありません。
ここでは、業務課題別にどのようなツールが候補になるかを整理します。
課題別・ツール選定の考え方
営業活動が属人化していて情報共有ができていない場合は、CRM・SFAの導入が有力な選択肢になります。
見積書や請求書の作成、経理業務に手間がかかっている場合は、会計・請求管理システムのクラウド化が候補になります。
勤怠管理や労務手続きに時間がかかっている場合は勤怠管理システム、定型的な事務作業に時間を取られている場合はRPAによる自動化、在庫や受発注の管理が煩雑になっている場合は販売管理・在庫管理システムが、それぞれ検討すべき分野です。
以下は、業務課題とツール分野の対応関係をまとめた一覧表です。
| 業務課題 | 検討すべきツール分野 | 具体例 |
| 営業管理の属人化、顧客情報がバラバラ | CRM・SFA | Zoho CRM、Salesforce、kintoneなど |
| 経理業務に時間がかかる | 会計・請求管理システム | freee、マネーフォワードなど |
| 勤怠・労務管理が煩雑 | 勤怠管理システム | ジョブカン、freee人事労務など |
| 定型事務作業に時間がかかる | RPA | UiPath、WinActorなど |
| 在庫・受発注管理が煩雑 | 販売管理・在庫管理システム | 楽楽販売など |
複数の課題を抱えている場合の考え方
多くの企業では、営業管理と経理、勤怠管理など、複数の課題を同時に抱えているケースが少なくありません。この場合、すべてを一度に導入しようとすると予算オーバーになりやすいため、最も業務への影響が大きい課題から優先順位をつけて導入することが重要です。
どの課題から着手すべきか自社だけで判断がつかない場合は、業務課題の整理から一緒に行える専門家に相談することで、限られた助成上限額を最も効果的に使う投資計画を立てやすくなります。
助成金額のシミュレーション
助成率の適用イメージをつかむための計算例を紹介します。以下は実際の採択事例ではなく、あくまで助成率の仕組みを理解するための仮の数字です。
対象経費が200万円のツール導入を行う場合、助成率1/2が適用されるケースでは200万円×1/2=100万円が助成額の目安になります。
小規模事業者や環境負荷軽減に資するツールに該当し、助成率2/3が適用されるケースでは、200万円×2/3≒133万円が助成額の目安です。
ただし、助成限度額は150万円のため、対象経費が225万円を超える場合でも、助成額は上限の150万円までとなります。
自社が小規模事業者に該当するかどうかや、導入したいツールが環境負荷軽減に資するかどうかによって、実際の助成率は変わります。詳細な要件は公社の募集要項で必ず確認してください。
申請の流れとスケジュール
事前準備と申請の流れ
申請には、国が提供する電子申請システム「Jグランツ」を利用するため、事前に「GビズIDプライムアカウント」を取得しておく必要があります。
GビズIDの取得には1〜3週間程度かかることが一般的なため、申請を検討し始めた段階でまず着手しておくとスムーズです。
申請の流れは、自社の課題整理・導入したいツールの選定から始まり、Jグランツを通じた交付申請、交付決定を経て、ツールの導入・支払いを実施し、実績報告を行う、という流れになります。
採択された事業者は、助成対象期間内に専門家による最大5回(1回2時間以内)の無料フォローアップ支援を受けることができるため、導入後の定着化にも活用できます。
募集スケジュール
令和8年度は、第1回の申請受付が2026年6月11日から7月3日まで実施されました。
第2回募集は令和8年9月頃に受付を予定しています。
申請受付期間内であっても、予算額に達し次第受付を終了する場合があるため、導入したいツールの目星がついている企業は、早めに準備を進めておくことをおすすめします。
他の東京都DX関連助成金との違い
東京都には、本制度以外にも中小企業のDXを支援する助成金が複数あります。
ここでは代表的な制度との違いを整理します。
「東京都DX推進トータルサポート事業」は、アドバイザーによるDX戦略策定支援から、デジタル技術の導入・活用までを長期的にサポートする制度で、助成上限額が最大5,000万円と非常に大きい一方、アドバイザー作成の提案書が必要になるなど、申請のハードルは本制度より高めです。
まとまった規模のDX投資を、戦略策定の段階から支援してほしい企業向けの制度といえます。
「サイバーセキュリティ対策促進助成金」は、セキュリティ機器・ソフトウェアの導入費用を最大500万円まで助成する制度で、IPA(情報処理推進機構)のSECURITY ACTION二つ星の宣言が申請条件になります。
DXの推進とあわせてセキュリティ対策を強化したい企業に向いています。
以下は、本制度と主な関連制度の違いをまとめた比較表です。
| 制度名 | 助成上限額 | 助成率 | 特徴 |
| 中小企業デジタル導入促進補助事業(本制度) | 150万円 | 1/2以内(2/3以内) | アドバイザー支援なしでシンプルに申請できる |
| DX推進トータルサポート事業 | 最大5,000万円 | コースによる | アドバイザーによる戦略策定支援からセット |
| サイバーセキュリティ対策促進助成金 | 500万円 | 1/2 | SECURITY ACTION二つ星の宣言が条件 |
まずは手軽にツールを導入したい企業は本制度、まとまった規模でDX戦略から進めたい企業はDX推進トータルサポート事業、セキュリティ対策も同時に進めたい企業はサイバーセキュリティ対策促進助成金、というのが大まかな使い分けの目安です。
よくある質問
Q. CRMやSFAなどのITツールも助成対象になりますか?
A. 新たに導入するソフトウェア・クラウドサービスであれば対象になり得ます。
ただし、既存ツールのライセンス追加やスクラッチ開発は対象外となる可能性があるため、導入形態を事前に確認してください。
Q. 導入したいツールが決まっていなくても相談できますか?
A. 「何を導入すべきかわからない」段階からでも、業務課題の整理からご相談いただけます。
課題別にどの分野のツールが候補になるかを一緒に検討します。
Q. 助成率はどうやって決まりますか?
A. 原則2分の1以内ですが、小規模企業者に該当する場合や、省エネ・紙資源削減など環境負荷軽減に資するツールを導入する場合は3分の2以内が適用されます。
Q. 第2回募集はいつから申請できますか?
A. 令和8年9月頃に受付を予定しています。
予算に達し次第受付を終了する場合があるため、早めの準備をおすすめします。
Q. GビズIDプライムアカウントの取得には時間がかかりますか?
A. 一般的に1〜3週間程度かかるとされています。
申請を検討し始めた段階で早めに取得手続きを進めておくとスムーズです。
Q. 採択された後のサポートはありますか?
A. 助成対象期間内に、専門家による無料のフォローアップ支援を最大5回(1回2時間以内)受けられます。
導入後の定着化にも活用できます。
まとめ
東京都「中小企業デジタル導入促進補助事業」は、CRM・SFA、会計・請求管理、勤怠管理、RPAなど、幅広いITツールの導入費用を助成対象にできる、都内中小企業にとって使い勝手の良い制度です。
令和8年度は助成上限額が150万円に増額されており、第2回募集も令和8年9月頃に控えています。
一方で、「何を導入すればいいかわからない」という段階では、限られた助成上限額を最も効果的に使うために、業務課題の整理から始めることが重要です。
